円空―旅して、彫って、祈って―
あべのハルカス美術館
あべのハルカス美術館の開館10周年を記念し、2024年2月2日より円空の特別展が開幕しました。(あべのハルカスが天王寺にできてから、もう10年経つんですね〜)
円空展は、巡回しないハルカス美術館だけの特別展。江戸時代の修験僧であり、仏師でもある円空の彫った仏像が、日本各地から大阪に約160体集結しています。
実をいうと、これまで円空仏を意識的にみたことがありませんでした。(意識的に、というのは、もしかしたらどこかで遭遇はしていたかも…という、自信のなさからです)
仏像というと、有名なお寺や博物館で見るような、なめらかなお肌と繊細な彫刻をイメージしますが、円空の作品は彫った跡がみえる荒々しさ。技巧的ではなさそうに見え、ここのところの円空人気が理解できずにいました。今回の特別展情報は駅のポスターでキャッチ。SNS情報によると思うよりはゆったり見れそうで、ポスターになっている仏像の撮影ができるのも高ポイント。よい機会なので、生の円空を見に行ってみることにしました。
金剛力士(仁王)立像(吽形)(1685年、岐阜県千光寺)
入口で出迎えてくれた、笑顔がチャーミングな仁王像。
木の美しい流れが、ヴィーナスにも見えてきます。
両面宿儺坐像(1685年、岐阜県千光寺)
第4章 祈りの森の展示が、1点を除き撮影可能です。
通常は背面に配置する武人を、隣に持ってくるという大胆さ。
観音三十三応現身立像(1685年、岐阜県千光寺)
京都・三十三間堂の千手観音を髣髴させる圧巻さ。
ひとつひとつお顔が違う、お気に入りのスマイルを探して。
護法神立像(1685年、岐阜県千光寺)
1本の木を4つ(十字)に割って、木裏を前面に彫ったもの。
左の像の足元に、割った面というのがわかる90度の部分があります。
不動明王および二童子立像(1685年、岐阜県千光寺)
恐ろしい表情で表されることの多い不動明王も、円空の手にかかれば
スマイルの癒されキャラに。両脇の童子も愛らしいです。
烏天狗立像(1685年、岐阜県千光寺)
理屈抜きにカワイイ。烏天狗は迦楼羅(かるら)と同じとか?
奈良・興福寺の迦楼羅とはずいぶん印象が違います。
円空の仏像、映像や写真で見ていたのと実際見るのでは、まったく印象が違って驚きです。荒々しく感じていたのは「木を切ったまま」のところが多く、それを活かした表現をしていたためでした。木や森自体に宿る神、それを浮かび上がらせるように神々の表情を加えたんだと思えば、円空仏のスタイルがとても自然に思えます。技巧的というよりは、木のもつ風合い、木目や質感、色などに合わせて彫ることに優れていたのではないかと。
ルネサンスの巨匠ミケランジェロは「大理石の中に天使を見た。そして天使を自由にするために彫った。」といったという話があります。円空の作品にも同じような精神が込められているように感じたのでした。
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