[ 縄文探訪(長野市と周辺編) ]

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長野県立歴史館(中部高地の土偶展)

2019年の長野県立歴史館開館25周年記念を祝って、中部高地周辺〜長野から山梨、一部新潟も〜にかけて広がる地域から、土偶が集まっているらしいと聞いて訪ねました。各地バラバラにある仲間たちが集まるからこそ傾向や変化など見えてくるものがあって、もう止まらない(^_^)土偶たちは表情豊かで、見ていると楽しいだけでなく癒されます。この地域の土偶は中期ものが圧倒的多数派ですが、後期・晩期のシンプルに気の抜けた感じも見逃せません。
<開催期間>2019年11月23日〜2020年2月2日(企画展アーカイブ
2017年に引き続き、2回目の長野県立歴史館です(^^)
第一室では縄文人にとって土偶を解説。
今回の特別展の前、2週間ほど催された
国宝土偶展では5体揃ったそうですが、
こちらは複製の展示となります。
今回思い立ったのは、いつもは各地にある
八ヶ岳の土偶たちが一度にみられると同時に
写真に収められる絶好の機会だったから。
縄文のよさかどんどん拡散されるチャンス。
第二室は長野から山梨にかけて広がる八ヶ岳山麓の土偶たちがズラリ。
中、小型の土偶が並ぶ中、中央の中空土偶が目に飛び込んできます。

■縄文前期、土偶づくりのはじまり
縄文前期中葉、釈迦堂遺跡の板状土偶
以前はなぜこの七点かと思ったけど、
最近は体のみの表現が多い前期に、
頭つきの土偶があるってすごいことと
感じてきました。

獣面把手付土器
縄文前期後葉、有明山社遺跡
土器の口縁部に施された猪の顔。
長野では前期まだ土偶が作られず、
動物の顔表現のみ見つかっている。

■縄文中期、中部高地の土偶づくり全盛期の土偶たち
土偶づくり花盛りの時代、地域や時期ごとにみられる特色が見比べられるのは企画展ならでは。ていねいに細工されたモデル土偶は特にすばらしいです。
土偶装飾付土器
中期前葉、原村大石遺跡出土。
土偶装飾付土器の原型。
元祖コップのフチ子さん。
顔面把手付土器
東郷市森下遺跡。口縁部に大きな
顔の細工がありますが、タヌキで
しょうか。愛嬌があります。
大きな写真
三角形土偶と首のない土偶(29,30)
中期後葉、新潟県土尻手遺跡
頭&手足のない土偶たちは、
壊されていることが少ないそう。
同様の土偶は十日町博物館にもあり。
大きな写真
河童型土偶
中期後葉、道尻手遺跡(左)と
栄村ひんご遺跡(右)
同じ信濃川流域でもハート形の顔を
もつ。鼻の下がえらく長いです。
白い土偶
中期前葉末〜中葉初頭、長野市檀田遺跡
裾花凝灰石入りの粘土で制作。
赤が好きな縄文人の美白表現。
赤い河童形土偶
飯山市深沢遺跡(38,40)と
中野市千田遺跡(39)の土偶。
場所によって土質が違い、色が
微妙に異なります。
飯山市深沢遺跡の中空土偶。
中期中葉。技術、紋様、大きさが
土器級の土偶です。
大きな写真
中野市千田遺跡、6本指の土偶。
指は5本あるから5個刻みをいれたら
6本になってしまった。
実は是川の合掌土偶の指も6本。
中野市姥ヶ沢遺跡の有脚立像土偶。
上半身が薄く下半身太りしているのは、
土偶を立たせるため。中期の中実土偶
(粘土が詰まった本体)に多い体型です。
仮面をつけた土偶
中期中葉、諏訪市荒神山遺跡
胴部がスパッと切られている(・_・;)
使用後の始末、だそうで。だからこそ
完全な形のものは特別とわかると。
被り物に頭を覆われた土偶
中期中葉、塩尻市平出遺跡。
ハート形の顔に大きな被り物。
被り物は、一見智恵子抄ばりの
おかっぱ…に見えます。
焼町式土器の文様がついた土偶
中期中葉、小諸市郷土遺跡
焼町式土器の文様…そうなの?と浅間で
撮った土器写真を見返すと、楕円部分に
点描がたくさん。うねる曲線とリングの
装飾に目を取られ、見落としてました。
髪飾り、耳飾りをつけた土偶
中期中葉、宮田村中越遺跡
顔の部品配置がカワイイ黄金比。

髪飾り、耳飾りをつけた土偶
中期中葉、宮田村中越遺跡
寄り目で鼻は上向き。
平たい顔の土偶
中期中葉、塩尻平出遺跡
鼻の下が異様に短い…
クシャおじさん?
入れ墨表現のある土偶
中期後葉、伊那市今泉遺跡
こちらは逆に鼻の下伸びてます。
頬に入っているのが入れ墨です。
小型土偶
中期中葉、北杜市諏訪原遺跡
身長5cmのアイドル「ちびーなす」
大きな写真
小さくてもていねいな作り。
横から見たら、他の土偶と同様
胸もお尻もちゃんとあります。
ポーズをとる土偶
中期中葉、岡谷市花上寺遺跡
こちらもすごく小さな土偶です。
初期の小型土偶
中期前葉、伊那市月見松遺跡
目が点、装飾はほぼありません。
大型円錐形土偶「子宝の女神ラヴィ」
中期中葉、アルプス市鋳物師屋遺跡
身長25.5cm。目の中にほんのり赤の
色彩が残っているのが見えます。
大きな写真
後ろ姿、円錐といっても
背中が表現されています。
中空で、小石を入れて音が鳴る
ようにしたという説も。
微笑む土偶(重文)
中期中葉、アルプス市鋳物師屋遺跡
縄文のビーナス似。
この地方、この時期は、この
つり目タイプが多いです。
土偶
中期中葉、塩尻平出遺跡
こちらも縄文のビーナス似。
顔はハート形、焼き上がりは
縄文人の好きな赤。
円錐型土偶
中期中葉、茅野市山ノ神遺跡
ラヴィ似のこちらも土鈴として
使っていたのかも説あり。
目も口も△だけど笑っているよう。
円錐型土偶
中期、甲州市宮之上遺跡
お腹に両手をあてる姿の土偶。
ラヴィと同じ中空土偶です。
瞳のある土偶(重文)
中期中葉、アルプス市鋳物師屋遺跡
三角の口、入れ墨、つりあがった眉。

猿型土製品(重文)
中期中葉、アルプス市鋳物師屋遺跡
猿はリアルに作れるけど、土偶は
ひとと離れた顔にした縄文人。
有脚立像土偶
中期中葉、北杜市向原遺跡出土。
ちょっと頭でっかちなところと
丸みのある下半身がカワイイ。
首のとこスパッといったあとが…。
さておき、うしろ姿をチェック
すると、縄文のビーナスに似た
カーブの出尻(#^_^#)
髪型もさりげなく凝っています。
有脚立像土偶
中期中葉、原村丘尼原遺跡
全身にあしらわれた文様が
美しいです。
出尻形土偶
中期後葉、中川村刈谷原遺跡
後葉は出尻感アップ、腕も上向き
加減に広げる傾向が。
バンザイ形土偶(重文)
中期後葉、富士見坂上遺跡
上向き加減のハート形フェイス。
ムラの墓から壊されていない状態で
発見された、その地の「女神」です。
大きな写真
バンザイ形土偶は、360度
みられるショーケースに展示。
頭部は意外に奥行きあります。
出尻部分はスカートみたい…と
思っていたら、模様から衣装を
着ているとされているそう。
有脚立像土偶
中期後葉、尖石遺跡
坐像かと思ったら立たせるために
足を大きく曲げられていました。
出尻形土偶
中期後葉、喬木村地の神遺跡
出尻土偶を作っていくうち、もっと
お尻を出したい、という欲が…
こんなに突き出たものも。
口が十字に割れる土偶
中期後葉、佐久市平石遺跡
微笑のような無感情のような、
ミステリアスな表情を浮かべてます。
体中が装飾された土偶
中期後葉、佐久市楜沢遺跡
左に同じくクッキリとした彫りの
細工。出尻がポイント。
有脚立像土偶
中期後葉、安曇野市他谷遺跡
クッキリとした彫りが特徴的。
髪を編む土偶(背面に髪)
中期後葉、山形村三夜塚遺跡
テイストが左とよく似ています。
髪を編む土偶(背面に髪)
中期後葉、
四角い顔、渦巻の目。
分銅形頭部の土偶
中期後葉、駒ケ根市反目
線のみで表現した塩系の顔。

■縄文後期〜晩期、中部高地の土偶づくりブーム終焉
全国的には(特に東北から関東にかけて)後期〜晩期の土偶が多く出土していますが、この地域ではあまり出なくなります。寒冷化により土偶祭祀は低迷、温暖に回復傾向時は一時仮面土偶が制作されますが再び減少、その後は他の地方から影響を受けたもの細々と作るようになり、地域の独自性もなくなっていったようです。
仮面土偶
後期前葉、新町泉水遺跡
こちらが、国宝の仮面の女神含む
仮面土偶3姉妹のなかでもっとも
古いものとされています。
大きな写真
仮面土偶
後期前葉、韮崎市後田遺跡
複製予定だったけど、本物展示と
いうありがたいお話!
仮面土偶3姉妹の次女。
大きな写真
仮面土偶
後期前葉、佐久市西近津遺跡
仮面土偶3姉妹と同じ、帽子を
かぶっているような頭部。
精製の仮面土偶
後期、富士見町大花遺跡
結った髪が印象的。
土質も作りも上級。
小型仮面土偶
後期、富士見町大花遺跡
頭部の穴は、耳なのか髪なのか。
まるでテディベア、との声も。
大きな写真
粗製の大型仮面土偶
後期、岡谷市目切遺跡
装飾ほぼなし。ていねいに
作られた精製土偶と違って
割られたあともあります。
丸顔の土偶
後期前葉〜中葉、辰野町樋口五反田遺跡
つぶらな瞳の山形土偶
後期中葉〜後葉、飯田市中村中平遺跡
筒型土偶
後期前葉、東御市古屋敷遺跡
口ポカーン仮面の癒し系。
仮面土偶
後期、北杜市上ノ原遺跡
口がドットの十字。化粧か?
磨かれた仮面土偶
後期〜晩期、東御市赤岩新屋遺跡
装飾をおさえた意匠、美しい光沢、
一目で惹きつけられました。
自立しない土偶
後期中葉、北杜市石堂B遺跡
腰に手を当て、堂々とした立ち姿。
でも、下半身まで板状で自立不可。
両面土偶
後期、富士見町大花遺跡
左右両方に顔。まんまるな目と細目の2バージョンが楽しめます。
山形土偶
後期、松本市エリ穴遺跡
頭が山の形をしているだけでなく
結髪らしき形も見える。これは
のちに流行する結髪土偶の走りか?
土偶顔面
晩期前葉、松本市エリ穴遺跡
ヒトガタというよりモンスター的な
土偶で、なかなか魅力的なキャラ。
中空土偶(重文)
晩期、北杜市金生遺跡
遺跡で見つかった土偶のほとんどは
板状、だけどこの土偶は壊されて
いない状態で見つかった。
大きな写真
中空土偶の後ろ姿
こちらも360度見ることができました!
タコみたいな口、でも実は鼻。
土製品ではなく土偶の不思議。
背中にもお腹と同じ渦巻があります。
板状土偶
晩期前葉、小諸市石上遺跡
首飾りはあるものの、遮光器と同じ
時代とは思えないシンプル装飾。
足は省略されるように。
遮光器土偶
晩期、小諸市石上遺跡
一世を風靡し、西日本でも出土例が
ある遮光器。県内で出土するのは
珍しいのだとか。

■弥生時代のヒトガタ製品■

土偶づくりは縄文時代後期から減少し、
弥生時代に入るとパッタリ姿を消します。

そんな中登場するのが、ヒトガタの容器。
祭祀用の女神としての女性像ではなく、
骨を納める器として作られていました。
土偶形容器
弥生前期末〜中期初頭
塩尻市下境遺跡
鯨面(入れ墨)入りの顔を貼付。
土偶型容器
弥生中期、笛吹市丘遺跡
ほぼ同じ鯨面を入れ、まるで夫婦。雛祭りにも飾れそうです。
右の大きな写真

次は、長野県立歴史館(常設展示)


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